小野寺愛のESYA報告(5) 「教育者の仕事は、教えないこと」

こんにちは。小野寺愛です。報告第5回目となる今回は、 エディブルスクールヤードのスタッフの皆さん、とくに、ガーデンやキッチンで先生をしている人々と、その場作りの知恵を紹介します。

 

いつもの流れと儀式

子どもたちがガーデンやキッチンを安心できる居場所ととらえ、学びたいという意欲を持つのに大事なことは、なんでしょうか。 エディブル・スクールヤード(以下ESY) では、子ども自身が「この授業は正解・不正解がある場ではない」ことを理解すること、そして、授業の「はじまり・中盤・終わり」を自分自身でわかる必要があるということを大事だと考えました。

授業の「はじまり・中盤・終わり」 が明確になると全体像が見え、毎回、自分がどこでどのように動くべきかを安心して判断することができます。 だから、ESYでは、すべての授業に「流れと儀式」を持つようになりました。オープニングサークル(はじまりの輪)ではじまり、楽しい作業や意見交換を通して学び、クロージングサークル(おひらきの輪)で締める授業。自由と規律と楽しさ(そして美味しさ!)が生まれる秘密、どうぞ映像でご覧ください。


 

子どもたちをフルに受け入れる人々

さて、今回はさすが8年目のアカデミー運営、細かなところまで準備が行き届いていました。ものすごく密な学びのスケジュールが組まれているのに、「学校で勉強している」というよりは、気取らず飾らず、でも最高級に美味しい料理を出すレストランで「あたたかいサービスを受けている」、そんな気持ちにさえなりました。

毎日勉強しているのに、なぜこんなにもウェルカムされているような気持ちでリラックスすることができるのか。それは、いま映像でご覧いただいた「Routine and Rituals – いつもの流れと儀式」があるほか、連載第4回目にご紹介した 「Work Place Culture(職場の文化)」 (*記事にリンク)が徹底されていることも大きな理由だと思います。スタッフの大人としてのありかたが、みんなとても素敵なのです。

 

「なにを “教える” かというよりも、どう “在る” かが大事。

いま・ここを楽しめているか?
思いやりはあるか?
受け入れることができているか?
よく話を聞くことができたか?
主体的に動けていたか?
自分で考えることができているか?
クリエイティブであることができているか?
他者と協力できているか?

・・・子どもにどんな大人になってほしいかを思い描いて、自分はそんな存在であることができているかを、つねに意識しています。

子ども自身が問いを立て、自分で答えを探すことができるように、全身全霊でそのための環境と時間の流れをデザインする。そんなことを続けていたら、自分自身、毎日が学びの連続で、楽しくてやめられないよ!」

そう語るガーデンティーチャーのジェフの話を聞いていたら、不覚にも涙が。こんな学びの場に出会えた子どもたちは、なんて幸せなのでしょう。これぞ教育者ですね。これぞプロ意識ですね。

 

まずは自分が楽しむことが大事

キッチンでも、ガーデンでも、子どもと直接関わるスタッフの人としての在りかたがあまりに穏やかでピースフルで、参加者の一人からこんな質問がありました。

「あなたたちがなぜこんなに、揃いも揃って穏やかで、思いやりにあふれていて、しかも楽しい人たちなのか不思議すぎます。なにか秘密があるのかな。みんなで瞑想したりしているんですか?」

それを受けて、ニックは笑います。

「笑。瞑想はしていません。
ただ、自分たちの態度を、子どもがそのまま吸収して、それがクラスの雰囲気に反映されることをよく知っている。だから、楽しいクラスにしたかったら、自分がまずは楽しむしかない。思いやりを持ってほしかったら、自ら思いやりをもって子どもに接するほかないんです。
残り時間があとわずかなのに子どもたちの活動がゆっくりで焦っていても、まずは自分が落ち着かなくてはと思います。僕らが “急いで急いで” と彼らを急かしても、クラスの雰囲気が良くなることはまずないから。それをよーく知っている、ただそれだけのことだと思います」

本当に、そのとおり!

言うは易し、ですが、エディブルスクールヤードのスタッフはみんな本当に本当に、驚くほどにピースフル。私は個人的に、子どもに接する先生としての授業のスキルなどよりも、人としての在りかたを教わったような気持ちでいます。

食が人をつくり、人が町をつくり、町が国をつくり、世界をつくる。きちんと作ったものを食べて、穏やかに生きること。それを子どもと一緒にやること。それは何よりの未来づくりなのかもしれないと、ESYのスタッフと時間を過ごして心に刻みました。

さて次回はいよいよ、ESYのガーデンの紹介です!

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