小野寺愛のESYA報告(3) 「アリス・ウォータースのことば」

こんにちは。小野寺愛です。報告3回目となる今回は、エディブル・スクールヤード・アカデミーの初日の報告です。スタッフ全員のあたたかいウェルカムのおかげで、美味しい・楽しい・学び深いと3拍子揃った、幸せな1日でした。

 

世界中から実践者90人が集まる場

全米からに加え、イタリア、メキシコ、そして日本からの私たちが参加し、背景さまざまな受講生が90人、マーティンルーサーキングJr.ミドルスクールに集まりました。

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モンテッソーリスクールで菜園をしていて、子どもの写真集を兼ねたレシピブックを毎年作成している先生、イタリアにあるインターナショナルスクールで、国際バカロレアシステムの学びの中に、なんとかガーデンクラスとキッチンクラスを導入できないかを模索する先生、ハワイのコクア財団(Jack Johnson主催)で教育ディレクターをしている女性、画期的なコンポストシステムを作り、学校でのゼロ・ウェイスト(ゴミゼロ!)を実現した先生…。

誰と話をしても楽しい歓談のなか、スタッフから、ガーデンの収穫物で作った素敵なピンチョスが振る舞われます。自家製マヨネーズとスパイスがきりっと効いたゆで卵、生徒が作ったピザ釜から次々に焼き上がる畑のピザ。そして、ウェルカムドリンクには、私の背丈よりも高く茂ったレモンバーベナとミント、畑のレモンを入れた水や、摘みたてのジャーマンカモミールにお湯を注いだフレッシュなお茶。

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どれもシンプルなのにとびきり美味しい!さすが「全米オーガニックの母」とも呼ばれるアリス・ウォータースのお膝元。明日からの朝食・昼食は彼女のレストラン、シェ・パニーズのシェフが作ってくれるというのだから、ああ、贅沢すぎます。

「教える」よりも、「体験する場をつくる」ファシリテーション

これから5日間の教科書となる、7センチもある分厚いファイルを手にしたら、1エーカーの広さがあるガーデンを、ガーデンを案内するカードに沿って、自由に散策します。実はこれ、中学1年生が学校に入学して初めてのガーデンを体験するときに実際に行う「Card Hunt: カードで探検」の授業の手法。エディブル・スクールヤード(以下ESY)では、なるべく教師が「教える」ことなく、場のデザインや流れのつくりかたで生徒(参加者)自身が新しい発見をできるようにと日々スタッフが工夫を重ねています。

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「どこになにがあるか、色と配置とデザインの力で、大人に聞かなくても一目瞭然の道具小屋。日本の宮大工の手法を参考に、釘を使わずに作った建物です」

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「鶏小屋と道具小屋の屋根で収穫した雨水は、すべてこちらの巨大な雨水タンクへ。雨が少ないカリフォルニアでは、雨水はとても貴重な資源です」

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「米国先住民は、とうもろこし・インゲン・かぼちゃを “3姉妹” と呼び、必ず一緒に植えます。カボチャが雑草防止の地面カバーとなり、豆科のインゲンが土に窒素を供給しつつ、背の高いトウモロコシを支柱に育つという、いいコンパニオンプランツなのです。」

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「大きなピザ釜は、中学生たちが自作したもの。レストラン顔負けの温度でピザを焼くことができます。カードハントの後半、疲れてきた頃に焼きたてのジャガイモ(すべてガーデンから!)が置いてあるという粋なはからい。」

モンテッソーリ教育やパーマカルチャー、さまざまな手法にも見ることができる、自然の循環と子ども自身の自立をうながすデザインの数々。なんともたくさんの工夫があるガーデンで、明日からの学びが楽しみになりました。

 

アリスのウェルカムスピーチ

ガーデン散策のあとは、皆でダイニング・コモンズ(食堂)の見える広場へ。「安心で美味しい給食をすべての子どもたちに提供しよう」と建てた食堂は、レストランさながらの美しさです。その建物を背景に、ESY創設者のアリス・ウォータースがウェルカムスピーチを行いました。噛みしめて読みたい、あたたかで力強いエールでした。以下、翻訳文を全文掲載します。

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私たちはいま、大変な世界を生きています。
できることなら、私は、いまとは違う世界に暮らしたい。
そのために、(エディブルスクールヤードを通して)
子どもたちに働きかけてきました。

すべての子どもたちと時間を過ごそうと思ったら、
公立の学校で実践するのがいちばんです。
公立の学校は、どんな子どもでも通うことができる場所だから。
公立でなら、すべての子どもとつながりを紡ぐことができるから。

子どもたちを、自然と、そして自分自身との新しい関係に招待する。
それはとても美しい思想であり、なによりも大切なことです。

この国ではいま、大統領選挙が話題です。
でも、本当に大事な話には触れていないように思います。
本当に大事なもの、それは、食。農。子ども。
そして人々の暮らし。でしょ?

さまざまな問題の解決策について各論で話されることはあっても、
世界でいま起きていることの全体を皆で根本的に変えよう、
劇的に良くしよう、という空気もありません。

まるで、第二次世界大戦の前の時期に戻ってしまったみたい。
皆が、自分が何をしているかわからずにいる。

そんな中、
私たちがしようとしていることはものすごくラディカルです。

子どもたちが五感を取り戻すこと。
子どもたちが自然と恋に落ちること。
子どもたちが自信を取り戻すこと。

それはどれも、一度体験したら、
一生変わらない大切なことばかりです。
子どもたちは日々、経験することを全身で吸収できる存在だから。

文明がはじまって以来、人はずっと、
土とともに暮らし、
地域で採れるものをいただき、
季節のめぐりを祝福し、
子どもと食卓を囲み、
年長者を敬い、
先生を愛してきました。

・・・私たちが何を食べるかが、この国を作ってきたのです。

ブリア・サヴァランの言葉をいつも思い出します。
“We are what we eat – なにを食べるかが、私たちをつくる”

私たちは、食べ物でできている。
国の未来もまた、私たちがどんな風に育まれたかで決まります。
いつだってそうでした。

この国ではもう誰も、真剣に投票したいと思っていません。
候補者のひとりは、いつもマクドナルドを食べていますね。
飛行機にまで持ち込んだりして。

これは本当に、深刻な問題です。
ファーストフード文化が、私たちの学校システムにまで入り込み、
子どもたちの育つ糧になってしまったのだから。
「早い、安い、簡単」に価値を見いだす文化が
この国を覆おうとしている。

これは、健康の話だけではありません。
そうじゃないんです。

私たちが、食べ物や、食べかたと一緒に身体に取り込み、
消化してきた大切なものが、そっくりそのまま失われていく。
そういう話です。

大急ぎで食べ物を飲み込み、
食べることを大事だと思わなくなり、
もっともっとと多くを求めることが良しとされ、
安い食べ物が好まれ、
テーブルで食べる必要がなくなり、
車で食事を済ませ、
愛はiphoneで手に入ると思うようになってしまった。

そのすべてが、私たちを自然から遠ざけています。
子どもでさえ、一日中屋内で過ごし、放課後も外に出ません。

原っぱで転がらない。
海辺を歩かない。
誰が足を汚したいものですか。
新しい靴が必要になったら嫌だもの。
料理も、時間の無駄だから、やりたくない。

これが、今この国で起きていることです。

誰かに、この大変な問題を、画期的な方法で伝えてほしい。
映画などを使って、素晴らしい方法でできるのではないかしら。

未来をつくる公立学校での教育が、
いつから私たちの優先事項から外されたのでしょうか。
農家さんや先生という本当に価値ある職業を、
もう一度尊敬される、名誉あるものにしていきたいです。

実は今朝、とても悲しいことがありました。
世界中から集まった皆さんをどう歓迎したらいいのか、
迷いながらここに来ました。

でも、菜園を歩いていたら、
前向きな心を取り戻すのに時間がかからなかった。
あのオーブンから、次々にピザがでてきて、
集まってくださったみなさんが素晴らしくて。
エディブルのコミュニティー精神は、伝染性ね。

ファストフード文化では、
「誠実」にはたどりつけない。
コミュニティーを作るにもいたらない。
味のことは追求しようとしたかもしれないけれど、
それも失敗。

いいものは、すべてこちら側にあります。
だから、私はとにかく楽観的です。

・・・まとまらなくてごめんなさいね。笑

これから一週間、皆さんと一緒に、
大事なことをたくさん語り合いたいと思います。

「食」を、正式な学校の教科にしましょう。
手作りの学校給食を、すべての子どもたちに提供しましょう。

そういう大事なことを、話しましょうね。
ありがとう。

翻訳・小野寺愛、早川雅貴

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